◆◇ ミチル ◇◆

  10, 2017 23:07
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 木漏れ日に照らされながら、僕を待っていたミチル。

 夏の終わりの静かな小径を、二人並んで歩く。

 

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彼女は、木の葉を一枚拾い上げると、光りのある方へかざした。

そして、自分の手のひらも同じように光りにかざして、手のひらと葉が、光りで透ける様子を面白そうに眺めた。

『…私が研究者になりたい理由はね、例えば葉っぱ一枚拾った時に、どうしてこんな形をしているんだろう、葉の筋は人の血管に似ている…そうした疑問、好奇心、追求心を大人になった今でも、絶対に捨てられないからなのよ』

 ミチルはそう言うと僕を振り返り、優しくほほ笑んだ。

 

 

 翔野鷹也は、失った恋人の事を思い出した。そして同時に、絶望と後悔が入り混じったようなにがい感情が、心につき上げて来るのを感じた。

 

 

…ミチル、君はもういないんだ。

 六年前のあの日、僕は君を失った。

 僕は君の為に何もしてあげられなかった。

 救い出すことさえできなかった。

 ミチル、君はまだどこかにいて、今はまだ会えないだけだと思いたい…

 

 

心の奥深くにしまってあった想いと記憶が、鮮明に甦ってくる鷹也であった。

 

 

 

                                  by 杖男

 

 

 

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