- 日記 -

  05, 2018 22:19

《 セシルの独り言日記 》

 

    2018・3・5 月曜日

 

    セシル_c1   

 

あたしの名前はセシル。

高校一年生。

三週間前の話なんだけど、聞いてくれる?

子猫たちのご飯を買いに行った帰りに、

お菓子屋さんのショーウィンドウに飾られた、

チョコレートのディスプレイがあまりにも綺麗で、

店内へ誘われるように足を踏み入れたんだ。

陽気で能天気なカントリー音楽が流れていて、

見た事もないおいしそうなチョコがたくさん並べられていて、

まるでヘンゼルとグレーテルのお菓子の家に迷い込んだようだった。

14日のチョコはこれに決めた!」

私の隣にいた女の子が、ショーケースにある高級チョコを指さして叫んだの。

女の子のお母さんが店員に、そのチョコを6箱包んでもらってお代を払ってた。

あたしは思った。

…合計で一万八千円だなんて、あたしには絶対無理。チョコにそんなお金かけるなんて、

どうかしてるよ、この親子。

あたしなんて、月のお小遣いがたったの千円で、

そこからノートや靴下とか必要な物を買ってるんだもの。

それに、去年から突然、子猫が二匹迷い込んであたしの部屋に居候し始めたから、

餌代まで加算されちゃって、毎月ギリギリでやりくりしてる有様。

だからもう、三百円しか手元に残ってなかった。

別にチョコを渡したい人がいるわけじゃないし、

バレンタインなんてどうでもいい行事だったんだけど、

店の片隅にひっそりと置かれた可愛い小箱に入ったチョコが、

あたしの目に止まった。

小箱の中には、ココアがまぶされた手作り風の生チョコが、

6個入っていた。

その瞬間、あたしの頭の中に、ある人の顔が浮かんだ。

道ですれ違った時にはいつも「こんにちは!」と言ってくれる人。

「杖男から聞いたけど、子猫を二匹も飼ってるんだって? 一人で面倒みて偉いね。

何か困った事があったら僕に遠慮なく言いなさい」

この間、そう声をかけてくれた。

…あの人、チョコレート好きかな。

あたしは迷いに迷った末、その可愛いチョコを買った。

お代は三百円だった。

これでその月のお小遣いはなくなっちゃったけど、あたしは満足だった。

 

チョコは14日に、その人が住んでる家の玄関のドアノブに引っ掛けてきた。

生まれて初めて人にプレゼントを送ったその日は、記念すべき日だ。

別にお返しのクッキーなんて期待してない。

16年間生きてきて、

あたしが誰かに何かをしてあげようと思えた事が大切なのだ。

 

施設にいた頃、そして里親に引き取られて暮らす今、

自分以外の誰かを愛するという意味が、

あたしにはよくわからないし、わかりたいとも思わない。

学校の友達に対してだって、そんな感情わかない。

だって、み~んな馬鹿だもの。

甘ったればっかり。一人じゃなんにもできないお坊ちゃんやお嬢ちゃん。

 

ずっと前の話なんだけど、 

あたしが5歳の時に、

大学生のお兄さんやお姉さん達が、施設に慰問活動に来て、

人形劇を披露してくれた事があったんだ。

とっても楽しかった。嫌なことを忘れられた。

人形が一喜一憂する様子に、目を奪われたあたしは、

夢中になって物語の中に入り込み、人形達と喜怒哀楽を共にした。

H大の学生が運営する「銀の舟」という人形劇サークルの主催だった。

その時に、お兄さんやお姉さん達がうたってくれた歌が今でも忘れられない。

雨が、ふれば、小川が、でき、

風が、吹けば、山が、できる、

ヤッホー、ヤッホッホッホー、

さみしい、ところ、

ヤッホー、ヤッホッホッホー、

さみしい、ところ

 

唯一心の支えは両親や兄弟や友達ですぅ、な~んて会話をよく耳にするけど、

あたしはそうは思わない。

目に見えるものだけが心の支えになるなんて、思わない。

どんなに仲良くしてたって、

人は必ず消えてしまうものだから、

いつか一人になった時、

さみしい、ところを、

なんとか耐え忍ぶことができる、強さがほしいと思う今日この頃のあたしでした。

 

だからクッキーなんて期待してないんだってば!

 

 

本日の日記はこれでおしまい。

放課後にまた会いましょう!

 

気まぐれセシルでした。

 

 

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